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ドラゴンは、空中に舞う俺の方に向けて、前足を伸ばした。
その鋭い爪で、俺を切り裂く気なのだろう。
が、俺は宙にいる。
足場がない以上、方向転換も避けることもできない。
まずい、と思ったその時。
俺の視界を横切ったのは、オレンジ色の塊。そして、ルカは、剣で爪を思い切り弾いた。
「美味しいとこ取りはダメだぞ!キョー!!」
「ルカ?!」
俺は思わず、変な声を上げる。
突然現れたもう一人の敵に驚いたのか、ドラゴンは一瞬、固まる。
「さぁ、キョー!!
落ちる勢いで、ドラゴンの目を叩き斬るぞ!!!」
その姿は、元の時代にいた時と同じ、頼もしくて、明るいものだった。
「……あぁ!!!」
俺は頷くと、剣を構え、その切っ先をドラゴンの瞳に向ける。
「いっくぞぉーーー!!!!」
俺の声、ルカの声に、モモとシオンの声が重なる。
俺とルカはそのまま、重力の力も借り、ドラゴンの瞳めがけて剣を振り下ろした。
グニュッっとした、何かを突く感触。
「グ、グウォォォォォォ!!!!」
と同時に、辺り一面に、とてつもなくデカい叫び声が上がる。
俺とルカの刃は、確実に、やつの目玉を切り裂いた。
俺たちが着地する前に、ドラゴンは立ち上がった姿のまま、後ろ向けにゆっくりと倒れていく。
やつの腹が上を向く。そこには無数の矢が刺さっている。シオンのものだ。
後ろ足のつま先は、まだ微かに電流が走っている。モモが槍で皮膚を突いたのだろう。
――ドゴォォォン
ドラゴンはそのまま、洞窟の岩盤を背に、仰向けに倒れた。
無事、着地した瞬間、ゾワリと全身に興奮が走る。
やった。
やったのだ。
「巨大ドラゴンを、倒した……」
俺は放心状態でつぶやく。
と同時に、ルカが飛び乗るように、俺の後ろ側から抱きつく。
「すげぇよ!!倒した、倒したぁ!!!!」
モモとシオンも、こちらに駆けよってくる。
「すごいよ、キョーくん!ルカくん!!!」
「二人の攻撃が、とどめになった」
はしゃぐ三人に囲まれ、現実感がイマイチない俺は立ち尽くす。
すると、さっきまで後ろから俺の髪をグシャグシャになでていたルカが、ふと、目の前に躍り出た。
「キョー、本当にありがとう。
俺、ぶっちゃけ一人じゃ、不安だったんだ。
ここまでデカいのは相手したことなかったから……。
だから、マジで感謝してる」
ルカは、綺麗な瞳でじっと俺を見つめ、微笑む。
俺は、ずっと嫌いだと思っていた言葉を、初めてルカに向かって発した。
「友達なんだから、助けるのは当然だ」
自然と頬が緩む。
と、同時に、上から柔らかな日の光が、筋になって差し込み始めた。
どうやら、夜が明けてきたようだ。
今まで暗くて分からなかったが、洞窟の天井には外に繋がる隙間がいくつか開いていたらしい。
無数の光が線になって俺たちに降り注ぐ。
俺はその真ん中で、ニッと歯を出し、笑った。
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