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「じゃーん!!これ、なんだと思う?」 その細長い小瓶の中には、筒状に丸められた紙が入っていた。 俺はそれを引き抜き、モモと一緒に広げる。 そこには。 ――拝啓 ルカ様、シオン、みんな、お元気ですか? 「これって、もしかして」 モモが叫ぶと、ルカが歯をむき出しにして笑う。 「あぁ、未来のシスターからの手紙だ!!!」 俺は思わず目を見開き、食い入るように手紙を見る。 そこにはこう書かれていた。 ――皆さん、無事に過去にたどり着きましたか? 私はあの後、案の定村人たちに追求されましたが、なんとかはぐらかすことができました。 皆がいなくなってしばらくの間、村人たちは、あなたたちを探すことに必死でした。 しかし、時間が経つにつれ、あきらめたのか、新たな勇者の派遣を国に要請しました。 それと同時に、罠を作ったり、魔獣の生態を調べたりと、自分たちでできることをやりはじめたのです。 最初は、私も驚きました。 だって彼らは、私やシオンが何度言っても、耳を貸さなかった人達だったからです。 どうやら彼らは、あなたたち勇敢な子供の姿を間近で見て、感化されたようです。 教会に通う子どもたちも、そんな大人たちに影響され、勉強や武術を頑張っています。 私は今、未来が少しずつ変わっていっていると感じています。 いつか、あなたたちに胸を張れる日が来たら、その時は、こっそり遊びにいくかもしれません。 その日を楽しみにしています。 未来を生きる、シスターより。 「無事、だったんだ……」 俺は深いため息をつくと、そのままヘナヘナとテーブルに突っ伏した。 今まで張っていた緊張の糸がプツンと切れたのだ。 「良かった、本当に……」 隣のモモは、声を震わせている。 「まぁ、これで一件落着だな!」 「何が一件落着なの?」 ふと、ドアの辺りを見ると、そこにはおばあちゃんシスターが立っていた。 チビリューはすぐさま首を引っ込める。 「みんな揃って。悪巧みでも成功したのかしら?」 「悪巧みなんてするはずねーだろ! 俺たち皆、英雄なんだぞ?!」 頬を膨らますルカに、シスターは「はいはい」と笑いながら返事をする。 「英雄でも勇者でもいいけれど、人に心配をかけるのはだめよ? 本当に英雄なのなら、まずは、身近な人の幸せを守ってもらわなきゃ」 シスターの言葉が、ルカの失踪を指していることはすぐに分かった。 ルカもそれを感じたのか「……分かってるよ」と頭を掻く。 「でもま、新しい仲間も増えて、嬉しいわね。 さぁ、紅茶でもどうぞ」 そういいながらシスターは、皆に入れたて紅茶を配る。 一口飲んで、ほっと息をつく。 あぁ、幸せだな、なんて、年甲斐もなく思った。 こののんびりした空気を楽しむのもいいな、なんて考えた時だった。 「そんなことより、せっかくみんなそろったんだ!!!遊びに行こうぜ!!! 裏にあるぽんぽこ山に、巨大カマキリを探しに行こう!!」 ルカが声を張り上げる。 「いや、ダメだろ。さすがに」と冷静に諭すと、彼は口を尖らせた。 俺は呆れながら、別の提案をしてみる。 「別の場所でカマキリ探そう。 俺、良い感じの空き地を知ってるから」 「マジで!!!」 ルカの目が輝く。 「よーし、そうとなりゃ、出発だ!!!シオン、モモ行くぞ!!!」 「い、一緒に遊ぶなど恐れ多くて」 「わ、私もカマキリ探しするの?!」 戸惑う二人に、ルカは声を張る。 「何言ってんだよ!!俺たちは友達なんだぞ?!」 そう言ってルカは立ち上がり、俺に向かって手を差し伸べる。 「なぁ、キョー?さぁ、一緒に行こう!!!!」 窓の光に反射して、ルカの瞳がキラリと光る。 「あぁ」 俺は強く頷くと、躊躇うことなく、彼の手を握った。
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