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その転校生は、最初の一言目からおかしかった。
「5年3組の皆さん、はじめまして!
俺、てんこーせーの、ルカって言います!
ちょっと前まで、勇者してました。
学校には行ったことなかったんで、すげぇワクワクしてます!
よろしくお願いします!!」
そう言って、ルカは拳を高く掲げた。
そのオレンジ色の瞳と髪は、窓から指した光を反射して、キラキラと輝いている。
いやいや、そこはポーズきめるところじゃなくて、お辞儀するところだろ。
と呆れながらも俺は、そっとクラスを見渡す。
周りの皆も案の定、シラけた目で謎の転校生を見つめていた。
が、当の本人は、そんなこと全く気にしていない様子で、ニコニコと笑みを浮かべていた。
先生がコホンと咳払いする。
「えーと、というわけで、今日からこのクラスに入ることになりました、ルカくんです。
席はあの右端の、空いてるあそこだよ。わかる?」
俺の前の席が指される。
自分が指された気がして、少し肩がすくむ。
ルカは「ありがと!」と弾むように返事をして、こちらに駆けてきた。
「よろしくな!おまえ!友達になろう!!」
新品のランドセルを机に掛けたあと、ルカは振り返って歯を見せ笑った。
「あぁ」と返事をするものの、俺は心の中でため息をつく。
(この席が、なんで空席になったかも知らないで……呑気でいいよな)
苦い記憶が蘇る。
俺はそれをかき消すために、わざと窓の外に目をやった。
今日は快晴。
全く空も、ノーテンキなもんだ。
どいつもこいつも、人の気も知らないで。
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