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湊斗は起き上がり、ぼさぼさの長い前髪の下、三白眼でじっと水宮を見つめた。
湊斗には、本当に霊感――霊を視る力がある。
これは、父方の祖母譲りの力だ。拝み屋をやっている祖母・鏑木浪江は、業界ではそこそこ有名な強い霊能力者らしい。
しかし浪江の長男――湊斗の父親には、その能力は受け継がれなかった。
霊的なものを信じない両親の元で育つことになった湊斗は、両親に力を理解してもらえず、祖母との交流も妨げられて苦労したものだ。
結局いろいろとあって、湊斗は中学進学時に親元を離れ、祖母に預けられることになった。
以来、祖母や、祖母と同じように拝み屋をしている叔父の庇護下で育ったが、湊斗自身は拝み屋として霊を祓う技術はほとんど無い。
幼少期に散々霊に怯え、苦しんで辛かった記憶はしっかりとトラウマになり、拝み屋になりたいとは思えなかったのだ。
祖母も拝み屋になれと強制することはなく、『あんたが困らん程度に生活できればええわ』と、自分の身を守る技術だけは教え込まれた。
よって、湊斗は霊を視ることしかできない。
そして基本的に、相手に霊が憑いているかいないかなんて、一目見ればすぐにわかるのだ。
わざわざ『視てくれ』と頼まれなくとも。
本当に困っている人間と、まったく困っていない“ひやかし”の連中の区別も、すぐ付くわけである。
そして――水宮は、後者だった。
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