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ドンッ、と目の前の扉を強く叩く。
――けて――お――い――や、く――
あ――や――わ――やく――
ドン、ドン、ドン、ドン!
握った拳が痛くなり、柔い皮膚は破れて血が滲む。
それでも、痛みも熱さも忘れて、ひたすら扉を叩く。
――あけて――あけて、はやくあけて
――おねがい――たすけて、だれか
ぺた、ぺた ぺた、ぺた
裸足の足音が近づいてくる。
背後の闇から、何かが近づいてくる。
――いやだ、こないで、こないでよ
怖くて、振り向けない。見たくない。
ただひたすらに、扉を叩く。
ドン!
ぺた
――おねがい、あけて!
ドン、ドン!
ぺた、ぺた……たっ
足音が途切れた。
ヒュー、ヒュー、と何かの呼吸がすぐ後ろから聞こえる。背筋が凍った。
――っ、い、やだあぁぁ! あけてぇぇぇ!!
血に濡れた掌で、狂ったように扉を叩くその耳元に、生臭い息がかかった。
何かが、笑っていた――
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