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大理石の床、金の装飾の豪華な壁と家具、綺麗な観葉植物…。ベタな豪邸を想像していた春太は、現実を見てほっとする。
一ノ瀬邸は、絢爛豪華よりも閑古素朴の言葉があっていた。
全体的に深い色の木製の内装で、置かれている家具は必要最低限の客をもてなす為の飾りだけ。広さは豪邸並だが、シンプルかつシックな雰囲気が落ち着く。
「こちらでお待ちください。お茶を入れたら、すぐに冬人 様をお呼びしてきますので」
窓辺の、ニス塗りのテーブルとイス。
若木は流れるような動作でイスを引き、春太に座るよう促した。
そうして、すぐに若木はキッチンでお茶を入れだした。
ケトルに水を流し込み、スイッチを押す。
湯が沸くまでの間。戸棚から取り出した数種類の茶葉達に、吟味するような鋭い視線を向ける。
「春太様、紅茶は普段から飲まれますか?」
「紅茶は、全然…。でも、嫌いなものはないので何でも飲みます!」
「うふ、感心ですね。」
その答えが決め手だったようで、若木は白色の外袋に入っていた茶葉を手する。
丁度、湯も沸いた。
ティーバッグの添えられたカップの中に、湯気立つ液体が注がれる。
ティーバッグが数回上下に揺らされると、途端に紅茶の匂いが満ちた。
そこに牛乳と砂糖がくわえられ、気づけば目の前に琥珀色のミルクティーが運ばれてきていた。
「ゆっくりお飲みください。」
若木は台所を後にした。
ボーッと座っている間の出来事が夢のように感じられた。目の前のミルクティーも凄く高価な代物のようで、すぐに口をつけられなかった。
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