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「家に来るのは構わないが、春太は大丈夫なのか?」
「大丈夫、て?」
帰る用意をしている最中の春太は首をかしげる。
「もうすぐ、期末テスト。」
「うぐ…。」
「勉強はしてるんだろうな? 」
「も、もちろん!」
「ふーん。 まぁ、何点を取ろうと俺には関係ないけど、」
「けど?」
「1教科でも点数が悪ければ、夏休みの半分は補習でなくなるだろうな」
「え?!」
「3年なんだから当たり前だろ。夏が過ぎれば、もう受験期だ」
冬人が椅子から立ちあがる。
「でも、苦手な教科は難しい所が多くて…」
「どの教科が苦手なんだ?」
「英語、とか…。」
「じゃあ、次来る時は持ってこい。…教えてやるから、英語」
「教えてくれるの?冬人君が?」
「不満か? 」
片眉を歪ませるのは冬人の癖のようだ。
「確かに、お前には友達の岬が教えてるだろうから俺は必要ないだろうけど…」
「いや、冬人君て『こんなのも解けないのか。』とか言いそうだし、」
「…。」
「教えるとか、無駄なことだと思ってそうな人に見えるから。……あっ」
「随分な物言い。俺はそういう風に見えてるのか」
「い、いや! 今のは、その、」
「別にいい。それくらいはっきり言ってくれた方が好きだ」
それでも不安そうな春太の顔に、もう一言。
「…怒ってないからな。」
「本来なら、坊っちゃまが日頃の行いを見直さないといけませんからね」
「若木は、早く春太を玄関まで見送れ。客人を待たせるなよ」
「それは春太 様に失礼ですよ。ご友人ならば坊っちゃまがお見送りするべきです」
ますます眉を歪ませながら冬人は、帰る準備のできた春太の腕を掴んで玄関へ。
キッチンから出る寸前に春太は若木に分かれの挨拶をすると、お手本のようなお辞儀が帰ってきたのだった。
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