11話

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(うち)に来るのは構わないが、春太は大丈夫なのか?」 「大丈夫、て?」 帰る用意をしている最中の春太は首をかしげる。 「もうすぐ、期末テスト。」 「うぐ…。」 「勉強はしてるんだろうな? 」 「も、もちろん!」 「ふーん。 まぁ、何点を取ろうと俺には関係ないけど、」 「けど?」 「1教科でも点数が悪ければ、夏休みの半分は補習でなくなるだろうな」 「え?!」 「3年なんだから当たり前だろ。夏が過ぎれば、もう受験期だ」 冬人が椅子から立ちあがる。 「でも、苦手な教科は難しい所が多くて…」 「どの教科が苦手なんだ?」 「英語、とか…。」 「じゃあ、次来る時は持ってこい。…教えてやるから、英語」 「教えてくれるの?冬人君が?」 「不満か? 」 片眉を歪ませるのは冬人の癖のようだ。 「確かに、お前には友達の岬が教えてるだろうから俺は必要ないだろうけど…」 「いや、冬人君て『こんなのも解けないのか。』とか言いそうだし、」 「…。」 「教えるとか、無駄なことだと思ってそうな人に見えるから。……あっ」 「随分な物言い。俺はそういう風に見えてるのか」 「い、いや! 今のは、その、」 「別にいい。それくらいはっきり言ってくれた方が好きだ」 それでも不安そうな春太の顔に、もう一言。 「…怒ってないからな。」 「本来なら、坊っちゃまが日頃の行いを見直さないといけませんからね」 「若木は、早く春太を玄関まで見送れ。客人を待たせるなよ」 「それは春太 様に失礼ですよ。ご友人ならば坊っちゃまがお見送りするべきです」 ますます眉を歪ませながら冬人は、帰る準備のできた春太の腕を掴んで玄関へ。 キッチンから出る寸前に春太は若木に分かれの挨拶をすると、お手本のようなお辞儀が帰ってきたのだった。
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