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冬人が学校に来たのは、そのお見舞いから2日後。
「ふーん…、だいぶ解けるようになってんな。」
「へへっ、千舟くんの教え方が上手いからね」
千舟のシャーペンがクルリと回る。
「ねぇ、ここも分からないんだ教えて」
「どこだ? ……あ〜、ちょっと待て。」
教科書をめくる千舟を見つめていると、視界の端で人影が。
伸びた腕がペンを持ち、文字が浮かび上がるように書かれていく。
「これで解ける。」
「わぁ、ありがとう。…て、冬人君!」
「おはよう。」
今までに見たことがない程、冬人の顔色がいい。
夏服移行期間を過ぎた教室の中、彼だけが長袖。しかし、それとは正反対に涼しげに整えられた髪が中和して、不思議と暑苦しくはなく、異国の人に見える。
互いに微笑み合う春太と冬人の間で、自分の出番を取られた千舟はしかめっ面である。
「次 家に来た時は勉強を教えるて言ったけど、俺が学校に出向いた方が速いな、て。あの後 気づいた」
春太の隣に腰を下ろす冬人。
「久々に髪を 切った。…前がよく見える」
彼は本当に調子が良いようだ。
自分に見つめられて惚ける春太の鼻をつまむイタズラをするくらいに。
冬人の心に、遅い 雪解けが訪れている。
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