ダンジョンの隠し部屋

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

ダンジョンの隠し部屋

「おい。今月の上納金、随分と少ないじゃないか?」 「す、すみません! ダンジョンで怪我してしまい、治療費にかなり持っていかれてしまいまして・・・」 「言い訳はいい。来月の上納金が少なかったら、どうなるか解っているよな?」 「は、はい。必ず納めてみせますから」  俺はボスに土下座して、今月の上納金を支払い終えた。治療費は確かに痛手だったが、最近ダンジョンのモンスターが異常に増えていた。  もしかしたら、モンスターパレードが起きるかもしれない。そうなったら上納金所では無くなる。  貧民街で育ち、盗みに手を染めボスに腕を見込まれ組織に入り、ダンジョンで稼ぐようになって早幾年。  歳を重ねる度に上納金は段々と高額になり、無茶をして怪我を負い今に至る。  このままではダンジョンで命を落とすか、ボスに制裁を加えられて死ぬかの二択しかない。  パーティーを組んで安全策を取りたいが、組織の事がバレればお縄を頂戴されて絞首刑行き。  結果、単独でダンジョンを攻略せねばならず、今更街で盗みをするにしても、上納金を納めるには屋敷に忍び込むしか手段がない。  圧倒的な戦力差で捕まるのは目に見えている。ダンジョンでお宝を発見する方が、まだ勝率がある。  今日も今日とてダンジョンに入り、モンスターを倒しながらお宝を探す。怪しいところ、不自然な箇所をくまなく探して回る。  そんなある日、おれは隠し部屋を見つけた。複雑な迷路の様な分かれ道が沢山有った通路の中で、不自然な行き止まりを見つけ、くまなく調べたら隠し扉が有ったのだ。  隠し部屋には宝箱が有り、中には金貨百枚が納められていた。上納金を納めてもお釣りが来る。  他にも何かないかと周りを見渡すと、小さな台座にみすぼらし腕輪が置かれていた。 「売り物には成らないから俺が使うか」  腕にはめてみると、ピッタリだった。良く見れば小さな丸い半透明な石が幾つか埋め込まれていた。  他には何もなかったので、隠し部屋の入り口を元の状態に戻してダンジョンを出た。  俺は冒険者ギルドの金庫に半分を貯金して、懐には数枚を残した。そして、上納金として金貨四十五枚を納めた。 「来月の上納金も期待しているぞ」  ボスはご満悦だった。しかし、俺は来月の上納金に頭を悩ませていた。隠し部屋なんか早々見つからない。  来月分は納められても次はない。ならばどうする?  久方ぶりに娼館へ行き、賢者タイムに入った俺は思考の沼に落ちていた。そんな俺をみかねた娼婦が言った。 「奴隷でも買ったら?」  何気ない一言で俺は救われた。先行投資。一人より二人の方が安全にダンジョンを攻略出来る。更には奴隷ならば、お宝を山分けしなくて済む。  早速、次の日に冒険者ギルドの金庫から金貨を全て引き出し、奴隷市場に足を踏み入れた。  其処には多種に渡る奴隷達で溢れていた。性奴隷、戦闘奴隷、人間、亜人、幼子。  俺に今必要なのは勿論、戦闘奴隷だ。安く買えるのは亜人みたいだ。理由は何となく解るが、俺に差別意識は無い。  盾役として活躍してくれるなら誰だろうと構わない。奴隷商人に話しかける。 「金貨三十枚で買える戦闘奴隷は居るか?」 「丁度亜人で売り払われた奴が居るよ。反抗的で前のご主人様に見放されたんだよ」  奴隷商人は並べられている奴隷の中で、亜人のドラゴニュートを指差した。  目付きは鋭く、紅い長髪が腰までたなびき、麻布から下乳が見える程の膨らみを備え、トカゲの尻尾が生えたその奴隷はまごうことなき女性だった。 「買った!」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!