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戦闘奴隷の実力
「今日から俺が、お前のご主人様だ」
「前のご主人様に比べて、ひ弱そうだな」
金貨を払い、奴隷市場から抜け出して住処に連れ帰った所で、初めて会話をした。
「前のご主人様とは何があったんだ?」
「流せる胆力は有るんだな。アタシを性奴隷と勘違いしたのか、許可なく胸を触ってきたから殴った。そうしたら売られた」
中々に笑える理由だった。
「ご主人様に手を出しても、破廉恥行為の反撃は許されていたんだな」
「戦闘奴隷は戦いに対する命令を除いて、自由意思が有効だ。逆に性奴隷だったのなら、性に対する命令を除いて自由意思が有効だ」
「命令の受諾は結構限定的だったのか。バカだな前のご主人様」
「同感だ。まあ、ダンジョン内で夜営する際に安全が確保されて、尚且つアタシの気分次第では性行為に及んでも構わないんだがな」
「マジか。結界の魔道具幾らしたかな?」
しまった。先に冒険者ギルドに寄り道すれば良かった。
「はん、随分と金払いが良いじゃないか。アタシを買ったばかりで、まだ金貨が残っているのか」
「まあな、臨時収入だ。ダンジョンで隠し部屋を見つけた。宝箱の中身が金貨百枚だったよ」
「ご主人様は斥候だったのかい。良く今迄無事に生き残れていたと思ったら、補助役だったとはね」
「冒険者に成る前は、盗人で生きていたからな」
「犯罪歴無しで冒険者になれるとか、どんな仕掛けが有るんだい?」
「ダンジョンに入れば解るさ」
「なら、今から行こうじゃないか」
「装備品を揃えてからな。武器は何を使うんだ?」
「ご主人様が攻略出来る範囲なら、素手で十分だよ。鎧も要らないね」
「なら服と靴だけで良いな。先に冒険者ギルドに寄って、残った予算で好きな服を買って良いぞ」
「予算は幾らなんだい?」
「結界の魔道具含めて、金貨十枚まで」
「アタシにドレスでも着させる気かよ。下着含めて金貨一枚もかかりゃしないよ」
「なら余りは食糧や雑貨に奮発すれば良い」
「良いね。柔らかい敷物が有れば、夜営の時はお楽しみが待っているかもな」
絶対に結界の魔道具と、柔らかい敷物を買わねばなるまい。
ダンジョン前にたどり着いた頃の俺のお財布は、素寒貧となっていた。いや、高いね魔道具と柔らかい敷物。
「さっさと中に入ろうぜ。モンスターを殴りたくて、ウズウズが止まらねえ」
「戦闘狂かよ。俺は暫く後ろで見ているだけにするから、好きに進んでくれ」
「あいよ」
俺達はダンジョンに入った。低層はゴブリンやスライム等の、剣がなくても倒せるモンスターばかり。
俺が攻略しているのは、この低層に当たる。単独の攻略は安全策を考えたならば、ここ迄が限界だ。
中層になると、複数のモンスターと相対する羽目になり、オーガやトロール等の単体で強敵なモンスターが出てくる。
低層で大怪我を負う俺では、不可能な層だな。
そして、戦闘奴隷の実力は如何程かーーー
「おらあ!」
ゴブリンやスライムが、拳の一撃で屠られていく。
「え、強すぎじゃね?」
出会うモンスター全てが拳の一振りで薙ぎ倒され、俺は落ちていくモンスターの魔石を回収し、自身の一日の稼ぎを軽く越えられていて、ドン引きする。
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