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やり直し
前回同様、多種に渡る奴隷達で溢れていた。亜人は今回も他より安い。
「戦闘奴隷の亜人は居るか?」
「居ますが、女ですぜ。男は今回手に入らなかったんでさぁ」
普通、戦闘奴隷なら男の方が力もあり役に立つだろう。しかし、既に俺は下の世話も可能な女の方に、男以上の価値を見出だしている。
前回とは違い、離れたテントに案内されて中に入る。奥には堅牢な鉄格子が鎮座し、その中に亜人の奴隷が裸のまま立っていた。
近付いて見れば、体躯は俺よりも高く巨女だった。角を生やし、短い尻尾、白と黒の斑模様の髪をした亜人のミノタウロス。
「金貨四十枚でどうでしょう?」
「買おう」
即決である。俺の視線はある部分に釘付けだ。
「アタシよりデカイね」
身長だけじゃない、二つの大山が其処にはそびえ立っていた。今迄見てきたモノを巨と称するのであれば、今回は爆が相応しい。
支払いを済ませようと懐から金貨を出そうとした時だった。後ろから誰かが俺にぶつかって来た。
「ご主人様!?」
振りかえればドラゴニュートは巨漢の男に羽交い締めされていた。何処に隠れていたんだこんな奴?
そして俺にぶつかってきた男には見覚えがあった。組織の三下、俺と同じ盗人野郎だ。
「お前最近ダンジョンで稼いでるみたいじゃないかよ、羨ましいねえ。俺なんか上納金が払えなくて困っているのによお」
体の力が抜けていく。ぶつかった場所を見れば、其処にはナイフの刃が身体に入っていた。
「ぐは」
臓器が傷付いたのか、吐血する。いや、これは毒が仕込まれていた?
「俺だって冒険者になれたならお前みたいに稼げたかも知れねえ。だが、犯罪歴が有っちゃ成れねえんだよ。何でお前には無いんだよ?」
答えようにも痺れが身体中に行き渡り口が動かない。それに朦朧としてきた。
「ここの奴隷商人とは仲が良くてな。お前の好みに合う奴を、このテントの中に居させるくらいは訳ねえ」
始めから俺の金が目当てだったのか、汚い真似を。くそう、知っていたら対象のしようが有ったのに。
「アバヨ、金も奴隷も俺が大事に使ってやるから」
奴隷は本来、ご主人様が死ねば自由の身となる。戦闘奴隷の場合大体は先に死ぬのであまり関係はないかもしれないが。
だが、此処は奴隷市場で奴隷商人が目の前に居る。きっと自由になった途端に又奴隷にさせられてしまうのだろう。
意識も段々と薄れてきた。ああ、俺はこんな所で死ぬのか。三下からやっと抜け出せたかもしれないのに。
目の前が暗くなり、俺は意識を手放した。そして、確かに死んだはずだった。しかし、気付けば俺は数日前の拠点に居た。
「何がどうなっているんだ?」
ふと腕輪を見れば、半透明だった筈の石が一つだけ真っ黒に染まっていた。
「まさか、死んだら数日前に戻れるのか?」
石には限りがある。しかし、本当なら人生は一度きりでやり直しなんか出来やしない。
「もし、この半透明な石の数だけ死んでも、又数日前からやり直せるのなら、とんでもない事だぞ」
実は隠し部屋で金よりも、凄いお宝を俺は手に入れていた。
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