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しばらくの間そうして、楓はシーツから手を離した。
顔を上げると、画面に少しヒビの入ったスマホをサイドテーブルの上に見つける。
手を伸ばして電源ボタンを押すと画面は問題なく点灯して、見慣れたホーム画面を表示した。よく見れば充電コードが繋げられている。親か看護師が繋げておいてくれたのだろう。
はやく退院しよう。
彼女はそう心に決めた。
元気になって、退院して、学校に行って、お礼を言って、写真を見せよう。
お日様色の美術室はもう無くなってしまった。私だけの秘密の場所はここにしかない。
だから、彼だけ。
彼だけをあの日の美術室に連れて行こう。
「……そんなの、ときめくよ」
病室の扉が開く。ふわりと入り込んできた微風にカーテンが揺れる。
外はすっかり朝日に染まっていた。
(お日様色の美術室編・了)
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