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***  そのWebサイトは難なく開いた。ファイアウォールには何の反応もない。  楓はそのページをざっと眺めた。  よくある掲示板と同じように、打ち込んだコメントが上から時刻順に積み上げて表示されるシンプルな作りだ。最新のコメントは五年前のもので、授業の愚痴が短く書き込まれている。 「使われてないだけで閉鎖はされてなかったってこと?」    実はサイト自体はWeb上にずっと残っていたのかもしれない。クラスメイトの検索結果に何も表示されなかったのは検索ワードにミスがあったとか?  彼女はそう結論付けた。細かな理由や根拠なんてどうでも良かった。  本当にあったんだ。  自分の鼓動が早まるのを感じる。噂でしかないと思っていたものが目の前にあるという事実に彼女は興奮した。  まだおまじないが本物だと決まったわけじゃないけれど、それでもここに材料は揃っている。   「そんなの、ときめくよ」  楓にもう止まる気はなかった。  投稿ボタンをタップする。現れたコメント欄に、先程撮った美術室の写真をアルバムから選択して添付した。そして『#〇〇を呼べ!』と入力する。  その勢いのままに『送信』の文字をタップしようとして──指がぶれた。 「え?」  
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