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「おはよう、夕貴」
朝練を終えて、ぐったりしたままで教室に入ると、煌びやかな香りに包まれた。
「あ…藤堂。おはよ」
ニコリと微笑みながら、女子達の間をすり抜けて、夕貴のほうに歩いてくる。
また昨日と同じように、女子達に睨まれてしまった。
「朝練だって?」
「あ、うん。もお、眠くってさあ」
自分の机について、グダっと机に突っ伏した。
優しく髪を撫でられる感触が気持ち良く、本気で寝てしまいそうになる。
ん…?
そおっと顔を上げると、ヨシヨシと藤堂が夕貴の髪を撫でていた。
「わあ!」
「どうしたの?」
藤堂は不思議がっている。
「な、なんで髪、撫で…」
「可愛いものを愛でるのが好きなんだよ、俺。先生来たら起こしてあげるから、寝てればいい」
甘やかされて、何故か普通に睡魔に襲われた。
藤堂の指が、魔法の様に眠りに連れてゆく。
ほんの10分程だったけれど、気持ちよく眠ってしまった。
「ゆうき…」
そっと声を掛けられて、ハッと目を開ける。
「先生、来た」
「あ、ありがとう」
ずっと寝顔を見られていたのが、恥ずかしく、慌てて前髪を整える。
藤堂は静かに自分の席に戻って行った。
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