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昼休み。
また藤堂は勝手に夕貴に付いてきた。
仕方なく一緒に食堂まで歩く。
「夕貴!」
昨日と同じ渡り廊下で大智に呼ばれ、「おー」と手をあげた。
「また二人で食堂?」
「うん、大智は?」
「俺も行こっかなー」
いつもは弁当が多いのだが、今日は朝練で早かったので、弁当が間に合わなかったらしい。
「じゃ、三人で…」
チラッと藤堂を見る。
「いい、かな?」
「いいも何も、俺は勝手に夕貴に付いて来てるだけだから、好きにしていいよ」
藤堂は微笑みながら言った。
少しだけ不安になる。
余りにも目立つ二人に付いて来られ、大名行列の殿様、いや、二人が殿様で、こっちは下僕…のような気分だ。
ゆく人ゆく人、ほぼ全員が振り返っている。
「藤堂はさ」
「ん?」
「食堂の飯とかで大丈夫なわけ?不味いとか思わなかった?」
夕貴は、少し心配になって聞いた。
昨日は何も考えていなかったが、藤堂のような金持ちに、1杯380円のラーメンは、どんな味に感じたのだろう。
「夕貴と食べる物は、なんでも美味しいよ。それに不味いなんてとんでもない。作って下さった方に失礼だ」
「あ、そ、そうだね」
夕貴は、藤堂の最もな意見になんだか肩身が狭くなった。
「育ちがいいんだね。ご両親の躾がいいのかな」
大智が言うと「お前には話してない。勝手に意見を言うな」と藤堂は大智を睨む。
「あ、あの…」
二人がおかしな空気になり、夕貴は思わず二人の腕に両腕を絡めた。
(こうなったらヤケだ!)
正に捉えられた宇宙人のような体勢。
三人で道幅を取って食堂へ進む。
生徒達も先生方も、自然と道を開けてくれる。
「三人で!楽しく食べたいの!俺は!」
そう主張した。
「ん、わかったよ、夕貴」
大智が優しく言う。
「夕貴がそう言うなら、了承」
藤堂も言ってくれてホッとする。
三人で食堂に向かった。
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