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昼休み。
「藤堂くーん、学校内、案内しようか?」
「お昼持ってきた?食堂いく?」
いつもなら、閑散としている夕貴の周りにワサワサと女子生徒達が集まってきた。
「いや、できたら間宮くんに案内してもらいたいな。いい?」
「え?オレ?」
夕貴は、振り返って藤堂を見た。
「ダメかな?」
「い、いいけど…」
女子生徒達が一斉に夕貴を睨む。消えろと、言われているようだった。
仕方なく、財布とスマートフォンをポケットに入れ、二人で食堂に向かった。
ぎこちなく歩く夕貴の隣で、ゆっくりと歩幅を合わせてくれる。
「あの、なんで、俺?」
廊下を歩いているだけなのに、生徒達が、みんな振り返って藤堂を見ている。
正直、居心地が悪かった。
「好みだったから」
「はあ?」
コイツ、頭がおかしいのか?
「可愛いな、好きなタイプだなって思ったんだ。俺みたいなのは、嫌い?」
「嫌いって言うか…。俺、男だよ?」
夕貴は、チラリと隣を見る。
やっぱり綺麗だ。綺麗過ぎる。
「分かってる。可愛い男の子」
ニコリと笑顔を向けられて、夕貴は更に緊張してしまった。
暫く歩いていると前から見知った顔がやって来た。
「夕貴!」
幼馴染みの 植田大智(ウエダダイチ)。サッカー部の期待の星。
イケメンで明るく、面倒見の良い大智は、男女問わず人気があった。
「あ、大智」
夕貴は、よう、と小さく手を上げた。
「えーと、転校生?」
大智は、チラリと藤堂を見た。
「うん、そう。藤堂くん」
「どうも、夕貴の幼馴染みの植田です。よろしく」
そう言って大智は片手を出した。
「ふうん。幼馴染みね」
藤堂は出された手を無視して、両手をポケットに入れ、大智を軽く睨む。
大智は、仕方なく手を引っ込め「うん、小学校からずっと一緒なんだ」と笑った。
「お前みたいな奴、嫌いなんだよね、俺」
空気がサッと凍った。
「な、何言ってんの?藤堂。大智は、めっちゃいい奴で友達も多くって、俺なんかとは全然ちがくて…」
「あー、夕貴。いいよ、いいよ。面白いじゃん、藤堂」
大智は何故か藤堂のことを好ましく思ったようで、笑っている。
本当に心が広い。
「あ、俺ら食堂行くけど大智も行く?」
「いや、弁当あるから。じゃあ部活でな」
大智は夕貴の肩をポン、と叩くと爽やかに去って行った。
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