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「ライバル、だな」
藤堂は、ポツリと言った。
「へ?」
「あの大智って奴、間宮くんのこと好きだよね」
「はあ?さっきから何言ってんの?藤堂、ほんとオカシイって」
見た目が人と違うと、中身も少しオカシイんだろうか?
夕貴は、藤堂をマジマジと見る。
「幼馴染みってだけで、有利に立ってると思ったら大間違いだ」
おかしな事ばかり言う藤堂に、半ば呆れながら、食堂に案内した。
食堂でもやたらと目立ち、みんながジロジロ見てきたが、藤堂は全く気にしていない。
ラーメンを買って二人で空いている所に座った。
「俺も夕貴って呼んでいい?」
藤堂が不意に言った。
「あー、まあいいけど」
「夕貴のこと、もっと教えて?」
「俺のこと?」
人に語れるようなことは何もない。
「夕貴のこと知りたい」
何故、こんなにも気に入られてしまったのだろう。
仕方なく、ラーメンを啜りながら、夕貴は自分のことを話した。
両親と姉がいて、猫を飼っていること。
部活は、大智と同じサッカー部だけれど、ずっと補欠だということ。
得意科目は一応英語だけれど、それでも中の上というところで、他は中の下くらいということ。
趣味は漫画とゲーム。
休みの日は、大智とカラオケに行ったり、たまにボウリングに行くこと。
話してみて、自分はなんとつまらない人間だ、と改めて思う。
けれど、藤堂は何故か終始、微笑みながらそれを聞いてくれた。
「凄くいいね。夕貴らしい。益々好きになったよ」
そう言って夕貴をじっと見た。
「変な奴…」
思わず口に出して言うと「変な奴かあ、ありがとう」と藤堂は満足そうに顔を綻ばせた。
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