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車から降りて、電車に乗り換え、遊園地の最寄り駅に到着した。
藤堂に手を引かれ、大智には肩を抱かれ、夕貴は困るくらいにモテている。
(男に、だけど)
母親に言われた言葉を思い出して苦笑する。
藤堂がチケットを買ってくれ、三人で入場した。
「さてと。まずは、どっちが夕貴と乗るか」
そう言って大智と藤堂は、またジャンケンし始めた。
何だかこの二人がいつの間にか親しくなっている。
藤堂が夕貴以外とこんなに話しているのも初めて見た。
それはそれで、いいことだと思う。
藤堂が勝って、まずは最初に夕貴と急流滑りに乗る事になった。
「じゃあね、大智。行ってくるね」
「あんま触らせんじゃねえぞ」
大智はヤキモキしながら言う。
「さて、どうかな」
藤堂は、笑っている。
夕貴より、この二人が楽しそうに思えてきた。
__
「急流滑りは、子供の頃によく乗ったんだ」
藤堂は言った。
「そうなの?子供の頃、遊園地とか行ったんだね」
「ああ。家族四人で行ってたな」
幼い頃の藤堂はどんなに可愛かったろうか。想像するだけで楽しかった。
「今度、写真見せてよ。子供の頃の」
「ああ。いいよ。そのかわり夕貴のも見せて」
「俺?まあいいけど。全然普通だよ?」
藤堂に比べたら、きっと驚くほど普通だ。庶民代表だ。
「それがいいんだよ」
藤堂は、優しく笑うと、夕貴の肩をそっと抱きしめた。
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