転校生

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___ 「そりゃまた、随分気に入られたなあ!」 部活の後、スポーツドリンクを飲みながら、大智が楽しそうに言った。 「ほんと変な奴だよ」 夕貴もドリンクを飲み、汗を拭く。 大智のことをライバルだと言ったことは、伏せておいた。 まさか大智が自分の事なんか好きになるはずがない。 「けど、ちょっと悔しいなぁ…。夕貴は、俺だけのもんだったのにさ」 大智は冗談ぽく言って、ポンと夕貴の頭に手を置く。 「なんだそれ。俺は誰のモンでもないよ。残念ながら」 夕貴は笑った。 「そりゃそうだよな。でも好きな子とか居ないの?マジで」 タオルで汗を拭きながら、着替える為に二人で部室に向かった。 「居ない居ない。教室では気配消してる」 ハハッと大智は楽しそうに笑う。 その笑顔が眩しかった。 サッカー部には、女子マネージャーが二人居るが、二人とも大智の事が好きらしい。 年末に告白された、と大智が言っていた。 「けど、俺、好きな子いるからって断ったんだよね」 そう言っていた。 誰なのか聞いたけれど、教えてくれなかった。 大智が好きになるくらいだから、きっと素敵な女性なんだろう。別の学年の人かもしれない。 「あれ?夕貴なんか痩せた?」 シャツを脱ぐと大智が寄ってきて 夕貴の裸の胸に触れた。 「や?そんなことないけど」 いきなり触られて、ドキリとした。 藤堂の言った言葉のせいで、妙に意識してしまう。 「ちゃんと食ってる?」 「うん、食ってるよ」 暫く夕貴の身体を見て、大智は離れていった。 心臓がバクバクと煩かった。
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