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「おつかれっしたあ!」
さようならー、と先輩達に挨拶をして、二人で学校を出た。
駅に向かって暫く歩くと、デカい黒塗りの車が物凄い存在感を放って停まっている。
夕貴達が通り過ぎようとすると、スゥ―と静かに後部の窓が開き、藤堂が顔を出した。
「夕貴、お疲れ様。乗っていかない?」
「うぇっ!?」
驚いて変な声が出てしまった。
「だ、大丈夫です…」
「そう?せめて駅まででも」
「いや…」
「そっか…残念だな。じゃあまた明日ね」
藤堂が、ヒラヒラと笑顔で手を振ると、またスゥーと窓が閉まり、静かに車は発進して行った。
「すげぇな…」
隣で大智がポツリと言った。
「うん…すげぇ」
夕貴達の周りにもお金持ちの生徒はいるけれど、ここまで本物はなかなか居ない。
それに加えて、あの美しさがあれば、嫌でも目立つ。
「なんで、俺なんかに声掛けるんだろ、アイツ」
ポツリと夕貴が言う。
「ほんとだな…」
大智は、そう言ってから、少し黙り込む。
明日からが、少し思いやられた。
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