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エピローグ
それから_
半年ほどの時が過ぎた。
高校二年も終わりを迎え、いよいよ受験生になる春休み。
大智には、相変わらず怒られたり、甘やかされたりしている。
藤堂と大智もすっかり仲良くなって、最近は、たまに三人でご飯を食べたりカラオケに行くようにもなった。
その日も三人で遊んで、その後カラオケに行った。
藤堂がマイクを持ち、曲の前奏が流れ出す。
前奏が終わったのに、藤堂は歌い出さない。
「藤堂?どうしたの?」
夕貴は、顔を上げた。
「夕貴、大智。俺、東京に戻ることになったよ」
藤堂は、マイクでそう言った。
「え?」
ふざけているのかと思った。
「マイク使って冗談言うな」と大智も笑っている。
「母親も随分調子が良くなったし。やっぱり受験は東京でしろって父親が」
藤堂が真面目に言った。
「そ、そんな…」
夕貴は、寂しくてたまらなくなる。
「やだよ!これからもずっと一緒だと思ってたのに…」
気がつくと涙が零れていた。
「夕貴…泣かないで」
藤堂がマイクを置いて、涙を指で拭ってくれる。
「夕貴は、俺の初めての友達なんだ。だから、これからもずっと友達でいてくれる?」
そう言って、藤堂は優しく笑った。
「ん…」
夕貴は藤堂の目を見て小さく頷く。
大智は、じっと涙を堪えて口を結んでいる。
「大智もありがとう。会えて良かった。夕貴を幸せにしてあげてね」
「なんなんだよ!カッコつけんじゃねえ」
大智も、とうとう泣き出してしまった。
カラオケの伴奏が流れる中で、結局、三人で泣いた。
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