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家族
「ただいまー」
「あ、おかえりぃー、ゆうちゃん」
玄関のドアを開けると8歳歳上の姉、菜々美(ナナミ)が、猫と一緒に出迎えてくれた。
「暑かったでしょ?アイス食べるう?」
「あー、うん」
夕貴が洗面所で手や顔を洗っている間も、ずっと付いてきて声をかけてくる。
姉は25歳で、大手食品メーカーで契約社員として働いていたが、上手いことその会社で相手を見つけ、今は花嫁修業と称して、家でのんびりしている。
秋には、結婚するらしい。
「ゆうちゃん、帰ったのー?今日は、ゆうちゃんの好きな唐揚げよー」
奥のキッチンから母親の声。
夕貴はこの家の女達から、溺愛を受けて育っていた。
中学の頃は、それが嫌で嫌で仕方なかったが、高校に入った頃から諦めモードになり、二人にいいようにされている。
着替える為に二階に上がると、何故か菜々美も付いてきた。
「着替えるの手伝ってあげようか?」
「いいって!何言ってんだよ」
「昔はオムツだって変えてあげたし、お風呂も一緒に入ったでしょ?」
「姉貴、頭オカシイ!」
そう言って、バタン!と部屋のドアを閉めた。
「もう、恥ずかしがっちゃって」
菜々美は楽しそうに言うとトントンと階段を降りていった。
早く嫁に行ってくれ、と夕貴は心から思う。
「全く…」
独り言を呟きながら、制服のシャツとTシャツを脱ぐ。
鏡に写る自分の貧弱な身体を見て、大智に触れられた事を思い出した。
(痩せてなんかないのにな…。てか、いつも見てたってこと?)
なんだか複雑な気持ちだった。
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