3:作戦決行!?

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 古屋敷には人の気配が全くなかった。見捨てられてから随分と経っているようだ。生い茂る草を掻き分け、二人は入り口まで来た。古い鉄の扉は錆付き重たくなっていたが、人が通れるほどの隙間を開けることができた。  中に入ると湿気でカビ臭い。  調度品は古く、あらゆるものに蜘蛛の巣が張ってある。歩くたびに床の埃が舞い上がった。  もちろん灯りはないが、いくつもある窓から入り込む外の明りを頼りに二人は奥へ進んでいった。 「シエル…足元に気をつけて」 「う、うん…」  屋敷内の想像以上の状態にシエルは正直気後れしていた。わざとでなくとも雲雀に体を寄せたくなる。  自然と二人は体を寄せ合い、ゆっくりと中を進んだ。  ホールから続く廊下の先にある大きな扉を開けると、そこは居間のようだ。電気はつかなかったが、大きな窓があるため廊下よりも明るい。  ここは最近誰かが入った形跡がある。埃っぽさはなく、家具なども整頓されていた。  暖炉の前には絨毯が敷かれており、側に置いてあるロックチェアが趣を感じさせる。よく見ると装飾品も価値が高そうだ。いくつか置いてある花瓶は相当年季が入っているようだが、どれも繊細な紋様の絵付けが美しい。テーブルの上にある燭台も、すっかり黒ずんでいるがシルバー製だ。  一つだけこの部屋に不釣り合いなのは、部屋の片隅にある食器棚だった。  大きな食器棚だ。他の家具が立派な彫刻がされているものなのに対し、これだけは非常にシンプルな作りだ。購入された時期が明らかに違うのだろう。古めかしい感じもしない。中に納められている食器の数も、この規模の屋敷に対しては少ないように感じる。
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