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「暖炉を見つけた。薪も使えそうだ」
雲雀は力を使い薪に火をつけた。みるみるうちに部屋が温まる。
「シエル、ちょっと風を当てるよ。動かないで」
温まった空気を利用して、雲雀は濡れたシエルの髪の毛や洋服を乾かした。
雲雀が起こす風が温かく彼女を包み込む。
雲雀の使う力はまさに、彼の優しさそのものだった。
シエルは彼に背を向け髪の毛を乾かしてもらったが、時折自分のうなじに触れる雲雀の指を感じ肩をこわばらせた。
雲雀に背中を向けていなければ、シエルは真っ赤になった自分の顔を見られていただろう。
(シャワーを浴びたあとにお互いの髪を乾かし合うのってこんな感じかしら…)
シエルはそのシーンを想像して更に顔を赤らめた。
「シエル?ごめん、熱かった?」
彼女の耳が赤くなっていることに気がついた雲雀はシエルの様子を伺いながら声をかけた。顔を見ようと身を乗り出したが、さっとシエルに顔を背けられてしまう。
「だ、大丈夫!大丈夫だけど…ごめんなさい、ちょっと今は顔を見ないで……」
「?」
シエルが顔を隠すように俯くと、すっかり乾いた綺麗なブロンドがさらりと肩から落ちた。その間から覗くうなじもほんのり紅潮している。
彼女からほのかに香るジャスミンの香りに、雲雀は思わず息を飲んだ。
口づけしたい衝動に駆られつつもぎりぎりのところで制止した彼は、分かった、と小さな声を絞り出した。
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