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濡れた服を乾かした二人は、しばらくの間、並んで暖炉の前に座り、静かに薪を見つめていた。
(いい雰囲気…)
シエルはラーナの言葉を思い出し、自然と鼓動が早くなる。
暖炉の明かりと古めかしい室内の雰囲気が手伝って、二人の間にもいい雰囲気が漂っていた。
隣に座る雲雀の姿もいつもより色っぽく見える。
寒気からか緊張からか分からないが、シエルは身震いした。そしてすぐさま温かさを感じたかと思うと、肩には雲雀のマントが掛けられていた。
「シエル。こっちへ」
雲雀はそう言うと優しく彼女を抱き寄せた。
「あ、ありがとう…」
肩にかけられたマントから雲雀の匂いがする。
シエルが顔を上げると、雲雀と目が合った。そしてどちらからともなくキスをした。
暖炉の火に当たって温まった二人の唇がさらに熱を帯びる。
もう何度もキスを交わしてきた二人だが、その日のキスは少し違った。この場所のせいだろうか。
唇を離して見つめ合う。まだ鼻と鼻が触れ合うほどの距離だ。
「あの…雲雀…わ、わたし…」
言葉を途切れさせ、シエルは目を瞑った。
「……雲雀となら、いいって、思ってるから…そ、その…」
さすがの雲雀も、シエルの言葉の意図が分からないほどうぶではない。雲雀は顔を真っ赤にした。自分の体が熱くなるのを感じる。
「シエル……」
次の言葉を言うよりも前に、彼女を抱き締めキスをした。先ほどよりも深く、長いキスだった。
長い時間が過ぎ、雲雀はシエルの唇から名残惜しそうに離れると、そのまま彼女の頬に、耳元に、そして首筋へとキスをした。髪の毛を乾かしている時に嗅いだジャスミンの香りがダイレクトに脳裏に伝わる。先ほどは制止できたが、今の雲雀にはそれは無理そうだ。
「んっ……」
しかしシエルの甘い声を聞いた瞬間、雲雀はシエルの両肩を掴み、自分から引き離したのだった。
「だっ駄目だ!!」
「…!?」
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