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雲雀はそのまましばらく下を向き、大きく肩で息をした。シエルから手を離し、少し距離を取ると、顔を上げずにもごもごとしゃべる。
「だ、駄目だシエル…その……」
ここに来る前にも逆の立場で同じようなやり取りをしたが、『だめ』と言われる側はこんなにも悲しい気持ちになるのだろうか。雲雀のその言葉にシエルは泣きそうになるのをこらえるのが精一杯だった。見られたくなくてとっさに顔を背ける。
「…ご、ごめんなさい…はしたないわよね…」
「違う!」
勢いで上げた雲雀のその顔は、髪色と同じくらい真っ赤だった。そして泣きそうになっているシエルを見て自責の思いに顔を歪ませる。
「ごめん、そうじゃなくて…その……ああ~…もう……」
髪をくしゃくしゃとさせ歯を食いしばると、雲雀は再び下を向いて大きくため息をついた。次の言葉が出てこない。
(言えばいいのに…でも、こんなところでじゃなくて……)
ここまで来て、雲雀は自分の計画が頓挫しそうな予感がしていた。それでも彼にだってプライドがある。計画を変更してここでプロポーズするとしてもせめて、自分がもっとリードしている場面でしたいところだ。
「そうじゃなくて…ナンナノ?」
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