4:出ると噂の・・・

6/8
前へ
/47ページ
次へ
 怒りの収まらないシエルをなだめたのは雲雀だった。 「シ、シエル……落ち着いて」  困ったような表情の雲雀を見て、シエルは彼に迫っていた自分を思い出してさらに顔を赤くさせた。両手で顔を覆い雲雀に背を向ける。 「なんでこんな…やだ…もう…」  恥ずかしがるシエルの肩に両手を置き、雲雀は彼女の耳元で優しく声を掛ける。 「シエル…こっちを向いて」 「ひばり…」  今のうちにと、ネールはラーナを連れてそそくさと退室した。もう少しだけっと言うラーナに喝を入れる。いつまでも留まるというのはそれこそ野暮なことだ。  部屋を出る前にネールは振り返り、居間の大きな窓に目を向けた。先ほど雲雀が窓を開けたおかげで、レースのカーテンが静かに風に揺られていた。  彼はにっと笑うと、カーテンに手を向けてすっと払うように動かした。カーテンが動き、外からの光が直接部屋の中へ届く。  予定通りのシチュエーションではなかったが、あとはきっと雲雀が上手くやるだろう。  我ながら従者としていい働きをしたと、自賛しながらネールは部屋を後にした。 ***
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加