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怒りの収まらないシエルをなだめたのは雲雀だった。
「シ、シエル……落ち着いて」
困ったような表情の雲雀を見て、シエルは彼に迫っていた自分を思い出してさらに顔を赤くさせた。両手で顔を覆い雲雀に背を向ける。
「なんでこんな…やだ…もう…」
恥ずかしがるシエルの肩に両手を置き、雲雀は彼女の耳元で優しく声を掛ける。
「シエル…こっちを向いて」
「ひばり…」
今のうちにと、ネールはラーナを連れてそそくさと退室した。もう少しだけっと言うラーナに喝を入れる。いつまでも留まるというのはそれこそ野暮なことだ。
部屋を出る前にネールは振り返り、居間の大きな窓に目を向けた。先ほど雲雀が窓を開けたおかげで、レースのカーテンが静かに風に揺られていた。
彼はにっと笑うと、カーテンに手を向けてすっと払うように動かした。カーテンが動き、外からの光が直接部屋の中へ届く。
予定通りのシチュエーションではなかったが、あとはきっと雲雀が上手くやるだろう。
我ながら従者としていい働きをしたと、自賛しながらネールは部屋を後にした。
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