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少し明るくなった部屋の中で、雲雀とシエルは静かにお互いを見つめていた。
シエルはやはりまだ恥ずかしいようで、雲雀を見ては視線を逸らし、落ち着かない様子だ。雲雀の手が自分から離れていれば、今すぐにでも逃げたい衝動に駆られていた。
一方の雲雀はシエルに逃げられまいと、しっかりと彼女の細い肩を抱く。そして何かを言おうと口を開いたが、ため息をつきながら唇を噛んだ。
雲雀のため息が何を意味するのか、シエルには分からなかった。ますます居たたまれない気持ちになり、彼の手をほどこうと両手で雲雀の腕に触れた。
その瞬間、雲雀の手が動いたかと思うと、シエルの手を取り優しく両手で握った。驚いて顔を上げたシエルが見たのは、いつもの優しい雲雀の顔だ。彼女の大好きな琥珀色の瞳が、じっと自分を見つめている。まだ恥ずかしいのに、目を逸らすことができなかった。
「…シエル。僕と、結婚してほしい」
「え…?」
「今日…言おうと思っていた。君はすごく綺麗にしてて…」
雲雀は照れながら辺りを見渡した。室内は先ほどの衝撃でぐちゃぐちゃだ。明るくなければまさにお化け屋敷だろう。雲雀は苦笑いしながら続けた。
「本当はこんなはずじゃなかったんだけど…もっと、ロマンチックなシーンで言おうと思っていたのに…」
続いて彼はシエルの手を一度放すと、ポケットから小さな箱を取り出してゆっくりとふたを開けた。
中には、赤い宝石がついた綺麗な指輪が一つ。
シエルは目を見開いて、ただその指輪にくぎ付けになった。
そんな彼女の表情がおかしくて、雲雀はふっと笑った。姿勢を正し、改めてシエルの左手を取る。
そして震える手つきで、彼女の左手の薬指に指輪をはめた。
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