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怒りと恥ずかしさで火照った手に、冷たい指輪の感触が心地よい。
シエルは指輪を見つめると、泣きそうな顔で雲雀を見た。
「でもこんな……今なんてわたし…ぐちゃぐちゃだし……」
「そんなことないよ。顔を真っ赤にして怒る君も好きだ」
「ラーナにいいように言われて…こんなところで雲雀に迫るような女よ?」
雲雀は苦笑いした。
「それは…その、シエル……さっき君は、はしたないって言ったけど、そんなことはない」
雲雀はシエルの手を自身の左胸に当てた。心臓の鼓動がとても速い。
「むしろ僕だって…今も、自分を抑えるのに精一杯で気が狂いそうだ」
「雲雀…」
「でも、僕は…君ももう分かっていると思うけど……正直、古いタイプで……」
握っていたシエルの手を自分の唇へ触れさせた。愛しそうにキスをしているようだが、赤くなった顔を隠すための仕草にも見える。
「君と、愛を誓って、夫婦になって……それから君と、一つになりたい」
その言葉にシエルは改めて顔を真っ赤にした。
「そ、そう面と向かってはっきり言われると……恥ずかしい、かも…」
「やっそれは…言葉の綾、というか……い、いや、意味は、その、お察しの通り、だけど……」
しどろもどろになる雲雀を見てシエルはおかしさが込み上げてきた。
シエルは口元に左手をやりくすくすと笑うと、ふと自分の視界に指輪が見えた。
笑うのをやめ、ぴんと伸ばした薬指にぴったりと収まる指輪をじっと見つめると、シエルは顔を上げた。
雲雀はやはり、いつものように優しく微笑んでいた。
雲雀は改めてシエルの手を取った。
「シエル。君を愛してる。僕の妻になって欲しい。ずっと、僕のそばにいて欲しい」
「雲雀……わたしで、いいの……?」
「君がいいんだ。……結婚してくれる?」
「…はい……!喜んで、お受けします……!」
二人は見つめ合い微笑むと、しっかりとお互いを抱きしめ合った。
雲雀が窓を開け、その後でネールがカーテンを開けたおかげで、外の光が室内に直に取り込まれる。通り雨が過ぎ、空には再び太陽が顔をのぞかせているようだ。
窓から差し込む光はまさに二人の門出を祝福しているかのようだった。
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