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屋敷の扉を開けると、そこには無表情の父親が立っていた。もしかすると裏口から入れば大丈夫かもしれないという甘い考えは一切通用しなかったことをMJは思い知る。
「おかえり、MJ」
一定のトーンで娘の名前を呼ぶその様子が一層怖い。
「お、お父さま…あの、ご、ごめんなさい……」
MJは髪の毛を両手で触りながら下を向いた。屋敷内の薄明かりの下でも彼女のブロンドは輝いて見えた。
妙なことに、彼女の髪の毛も洋服もすっかり濡れている。今日は雨は降っていないはずだ。
「MJ、その姿は――」
疑問に思った雲雀が理由を聞こうと思った瞬間、外の暗闇から聞こえた別の声に遮られた。
「あ、あのっ!ひ、雲雀さん……オレのせいなんです!すみません!」
「…雅か?」
雲雀はMJの後ろに現れた人物を見て少し驚いた。雅だ。雲雀の友人の息子で、MJの幼馴染でもある。まさか一緒にいるとは思わなかった。
「ルーラン湖へ出掛けていたら、雨がひどく降ってきたので……その、近くに古い建物を見つけたから雨が止むまでしばらく休もうと思って…」
こんな言い訳をしても何にもならないと分かっていたが、雅は言葉を続けた。
「雨が止むまで待とうって決めたのはオレで…そしたらこんなに遅い時間になってしまって…だから、その…」
二人がずぶ濡れであるところを見ると、結局帰り道でも雨に降られたようだ。最初に降り始めた時に大人しく帰っていればよかったのだろう。
しかし雅はMJ以上にずぶ濡れである。帰り道はMJが少しでも濡れないよう庇っていた様子が目に浮かぶ。…気休めだったに違いないが。
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