1:彼の思惑

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 雲雀はこの国『朱雀(すざく)』の王子である。半年後、雲雀の20歳の誕生日に、父親である今の王から地位を引き継ぐことが決まっている。  朱雀の国王は、この世界の四天王の一人でもある。その責任は大きい。支えてくれる伴侶がいるということは大きな原動力になるだろう。即位のタイミングに合わせて恋人シエルと結婚したいという気持ちも分からなくはない。  しかし四天王の妻になる女性にはやはりそれなりの責務が求められる。生半可な気持ちでは結婚はできない。  そのため、結婚相手の適正を見るという意味でも、各国の王家ではいわゆるお見合い結婚や、親が決めた結婚が多いのだろう。幼い頃から結婚相手を決められることも珍しくない。雲雀と同じような立場の親しい友人たちもそうである。  しかし雲雀の国ではここしばらくの間、代々の国王は子どもたちに自由に恋愛をさせていた。  だからこそ、雲雀はシエルと出会い、付き合い、こうして彼女との将来を考えることができるのだ。その点において雲雀は両親に感謝していた。そしてすでに両親へは彼女との結婚を視野に入れていることを伝え、サポートを得られることを確約済みだ。  雲雀は少しずつ準備をしている。しかし、シエルはどうだろうか?
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