1:彼の思惑

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 シエルはまだ学生のため、結婚するとなれば彼女の卒業後になるだろう。そして卒業後、彼女は研究者として国の機関に勤めることが決まっている。  研究に没頭している時のシエルは本当に活き活きとしている。そこに四天王の妻という役割が加わるとどのように変化するだろうか。自分の好きなことが思うようにできなくなるかもしれない。  この国の研究者の忙しさは誰もが知るところだ。  忙しさ故にすれ違いが起こる夫婦、カップルも多いと聞く。  もしシエルが雲雀と結婚するとなれば、仕事をどうするのか、話し合わなければならないことの一つとなるだろう。  もちろん、シエルが研究を続けたいというのであればそれを雲雀はサポートするつもりだった。  研究所はそもそも国の機関のため、王家は昔からその事業に深く関わってきた。王家の者が研究者として携わることも珍しくない。  さすがに四天王の妻が研究者として勤めた例はないが、前例がなければ作ればいいだけの話だ。  雲雀の暮らす屋敷にも地下には研究室がある。以前シエルにその研究室を案内した時、その設備に深く興味を示していた。今は普段誰も使用していないため、結婚後はそこを彼女に使ってもらってもいいだろう。  …こうしてあれこれと根回ししたところで、シエルが『イエス』と言ってくれなければ意味がないのだが。
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