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すっかり黙ってしまった雲雀を目の前にして、ネールは自分はどう行動するべきか考えていた。
雲雀は賢く、責任感の強い好青年だ。しかし恋愛事になると…正直言っていまいち頼りない。
四天王となり、結婚をし…自分の責務を全うしつつ妻を守る。雲雀にそんな器用なことができるのだろうか。ネールはそれを心配した。
(しかし…いらぬ心配か)
ネールは自分の心配に対してバカバカしいと、首を振った。
雲雀は誠実さを絵に描いたような人物である。
彼の周りには自然と人が集まる。そしてみんな雲雀の力になろうと最善を尽くす。天性の人たらしとも言えるだろうか。
多少、頑固なところがあるが、完璧ではないからこそ人々は雲雀に親しみを持って接することができるのだろう。
どのような状況になっても、周囲は雲雀を助けていくに違いない。
もし彼が迷ったり、困るようなことがあればみんなで支えていけばいいのだ。
ネール自身も雲雀に絶対の忠誠を誓っている。
(この方を支えるのが自分の責務。ともすれば、自分がすることは一つだけだ)
雲雀がプロポーズを考えてるというのであれば、それを全力で応援する。
(むしろ、プロポーズをしてしまうほうが進展の遅い彼らにとってはいいのかもしれない)
ネールはふっと笑った。
そして自分の主人に視線を移す。黙ったまま一点を見つめる雲雀に対して、ネールはそっと近づいた。彼のするどい瞳が光り、口元には不適な笑みを浮かべている。そして柔らかな茶髪を掻き上げて自分の主人に耳打ちした。
「ふふ、雲雀様。プロポーズにはまずは雰囲気作りが大切ですね。私にいい考えがございますよ」
「…聞こう」
雲雀は一瞬、ネールに怪訝な表情を向けたが、彼の話を聞くうちに珍しく口元をにやりと歪ませた。
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