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プロローグ
花を買うのは小学生の時以来だった。
だから、カウンターにいた店員さんから
声を掛けられた時、僕は何と答えればいい
かわからず戸惑ってしまった。
「どういったお花をお探しですか?アレ
ンジでしたら今日は10%お安くなりますよ」
にこやかな笑みを向けてくる女性に、僕は
「はあ」と曖昧な返事をする。
そして、きょろきょろとショウウィンドウ
の中に並ぶ花々を見ると、大きな白い花を指
差した。
「あれを、花束にしてもらえますか?」
ジーパンのポケットから財布を取り出すと、
店員さんは笑みを深め、その花を透明のセロ
ファンに包んでくれた。
僕はその花束を手に店を出ると、休日の
街並みを歩き始めた。
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