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 代金を支払い、商品を受け取った高城さんと、流れでエスカレーターに乗る。時刻は午後6時前。早く帰って夕飯の用意をしなければ、と百貨店を出る直前。 「よかったら、夕飯でも一緒にどうかな?」  高城さんが優しい口調で言った。顔を見るが、笑顔なだけで何を考えているのかわからない。 「なんで?」 「ネクタイ、選んでくれたお礼に」 「は?」  意味がわからない。選んだというか手に取っただけだし、支払いをしたわけでもない。 「ダメかな?」  逆になんで良いと思ってんの?  この前の夕食後のことを思い出す。あの時は本当に腹が立った。だけど、食事中はそうでもなかった。むしろこんな人がパートナーだったら、毎日きっと楽しい。そんなことを考えていたっけ。 「ダメです。俺、帰って夕食作らないと」  眩しい笑顔から逃れるように俯く。別に嘘をついたわけじゃないのに、なんだか心苦しい。  ん?メッセージ?  俯いた拍子に、時刻を確認してから手に持ったままだったスマホの画面が見えた。新着メッセージの通知が来ている。香奈からだ。  そのままメッセージを確認する。 『夕食は任せて!お兄の分は葉一が食べちゃった。たまには外で食べてきたら?』  という内容に、写真が一枚添付されていた。ドヤ顔の香奈と、いつもの食卓についてカレーを囲むみんなが写っている。 「ちょうどいいじゃない。今日は僕に付き合って」  ハッと顔を上げると、満面の笑みを浮かべる高城さんと目があった。背が高い高城さんから、俺のスマホの画面は丸見えだ。  香奈のバカ!!なんてタイミングだよ…… 「恵介くんは嫌いなものはある?何がいいかな」  高城さんが自然と俺の腕を引いて歩き出す。その背中はとても嬉しそう。  もう、好きなようにしてくれ!!
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