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プロローグ
『えっ、どういうことなんだい』
『話が違うわよ!』
『話聞いてないわよ!』
『この嘘つき!』
ここはとある小学校の美術室。そこには老若男女の人々のようなものや、明らかに動物のようなもの……簡単に言えばお化けや幽霊たちが群がっている。
ざわめき、何かに対して猛攻撃をするかのように押しかけている。
その対象は……。
「ごめんね、もう無理なんだ」
小さい体を丸こめて机の下に屈んでいる少年、真津美守、小学四年生。
見た目は普通の男の子だが実はそうではない。
彼は自分自身の周りを囲むお化けや幽霊たちがみえて、なんとそれらと会話もできるのだ。普通の小学生にはできないことである。でも彼にはできるのだ。
『次は俺だって言ってくれたのに』
『私は他の人から話を聞いてようやく解放されるって期待してたのよ……』
『やっぱりこんな上手い話、あり得なかったのか!』
どんどんざわめく。すごくすごくうるさく騒音以上なレベル。
でも面白いことに他の部屋には聞こえないのである。全部聞き取ることができるのは美守ら『みえるもの』たちだけである。
だからみえるものたちはその幽霊たちの声を聞いたら騒音以上のレベルで苦しんでしまう、そんなにもやかましいものなのだ。
でも上手くその声を聞こえなくすることもできるのだがまだ美守には難しい。
「うわわわわ!!!!」
と机の下から思いっきり美守が飛び出して美術室の窓を開けた。やはり耐えきれなかったようである。
バーン!と窓を開けると
びゅううううううー
っと勢いよく窓から幽霊やお化けたちが出て行く。さっきまであんなに騒がしかったのに全く静かになっている。
そして最後の一つが出ていったのを見計らって勢いよく閉めた。
バシャン!
ふぅ、と美守はため息をついたがこれは応急処置、また戻ってきてしまう。本当に残念なことに。しょうがないことである。
「……ごめんよ、みんな」
美守自身もなぜこんなことになってしまったのか、本人もわからなければもちろん誰にも分からない。
これはそんな不思議な『みえる』能力を持つ小学生美守とそんな彼にまつわる人々とかおばけとか幽霊たちとかの物語である。
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