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「──頼む! 円殿!──」
──それはあくる日の夜の事。
ボクが何時もと変わらず、ルニーン・タウンで今や外食店人気No.1まで上り詰めたレストラン・フシェにてウェイトレス業を熟し、家に帰って夕食を済ませ、入浴の順番を待ちながら食後のお茶を嗜んでいた、まさにその時。
エントランスホールに設けた応接間兼居間にやって来たとある人物がテーブル挟んだボクと真正面に対する向かいのソファの前へと進み入ると、唐突に絨毯が敷かれているとはいえ床に両膝を付き更には頭をも深々と下げて、先の詞を宣ったのです。
その人物の言動にボクは慌てふためき、座っていたソファから転げ落ちんばかりに立ち上がると、その人物の袂に駆け寄るや、
「──止めて下さい、カナメさん──いえ、陛下。顔を上げて、お立ち下さい」
立たせようとしますが、その人物は頑として動かず、嘗てこの世界──カドゥール・ハアレツを訪れた地球人が広めた、主に誠心誠意を以ての懇願ならびに謝罪のポーズのまま微動だにしません。
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