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体育館に続く渡り廊下を通り、中に入った。丁度、ステージ上で催し物が行われており行われている。邪魔にならないように後ろ側に立つと、学生たちのステージを楽しんだ。流行りのK-POPを踊るのがほとんどだが、たまにJ-POPを歌う奴がいたり、コントする奴がいたり、ドラムを演奏する奴もいた。
「今の高校生は多才だな」
「本当に凄ぇよ。俺も教えてる時思うもん。こいつらが次世代を担ってくんだなぁって。才能の塊」
ダンスが終わり、月ヶ瀬は拍手を送る。「そろそろだな」と天親が呟き、月ヶ瀬たちは前に座った。丁度次の催し物との間に休憩を挟む為、トイレや他の催し物を見に行く生徒たちで席がどっと空くのだ。
「じゃあ、俺はちょっと」
「おう」
天親が席を立ち、舞台袖に向かう。舞台袖には次のステージに立つ生徒が待っている。天親が顧問を務める演劇部の生徒たちだ。これが今回、月ヶ瀬が海源祭にやって来た一番の理由だった。
『うちに凄い生徒がいる』
二週間前、久しぶりの天親からのチャットにはそう書かれていた。
『あの子はバケモノだ』
『お前にも見てほしい』
何がバケモノなのか、何が凄いのか。その「何が」が書かれていなかったから最初はよく分からなかったが、国語教師の天親がその説明を忘れてしまうほど熱くなる生徒なのだから相当凄いのだろうと思った。『何が凄いんだよ』とツッコムと、秒で返信が来た。
『演技』
休憩が終わり、司会が次の発表者を紹介する。トイレやら何やらから戻ってきた生徒たちで体育館は満員で、会場は熱狂していた。さすが、海源高校の演劇部だ。ここの演劇部は歴史は古いし、全国大会でも優勝したことがあるほど実力が高い。そんな演劇部の顧問兼監督の天親が「凄い」とわざわざ月ヶ瀬に連絡するほど絶賛するのだから、その生徒は相当凄いのだろう。
「タイトルは『羅生門』」
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