おはよう。そしてさようなら

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フフンと得意気な幼女には悪いけど、幼子が親にできると自慢するような微笑ましさがある。和むわ。 「レムリアンシード、いや、長いから、レムでいいか?」 レムリアンシードなんていつか舌を噛む。レムリアンシード、レムリアンシード、レムリアンシード、レムリアンシード、レムッ!! 舌を噛んだ。 「この偉大なネクロマンシーの名前を勝手にっ」 「じゃあ、金髪幼女。金髪ロリータ。ゴスロリ。ゴッチャンデス。ボクっ子ちゃん。ネクーコちゃん」 「レムでいい」 レムリアンシードはぶすっとほっぺたを膨らませた。いちいち可愛らしい奴だな。いい子、いい子したくなり思わず頭を撫でてしまう。レムリアンシード。可愛いよ。 「き、きやすく女性の髪にふれるんじゃあない!!」 ペシッと手を振り払われる。待ってましたと激痛が走る。どうして忘れるんだ? 「ご主人様。もしかしてこの人、私と同じようなゾンビじゃないんですか?」 と部屋の隅っこで身体と生首を繋げていたブルマ少女が言った。どうやら自分で縫っているらしい。 「ゾンビ?」 「ああ、彼女はボクの傑作の一体でゾンビだ。名前はなんだったかな?」 「タマです」 「いや、野良猫じゃねーんだから!! 飼い猫気分かっ!! そして名前を覚えてねーのかよ!!」 ブルマ少女こと、ゾンビ少女、タマがニッコリ笑う。可愛いのに、ついさっきフルボッコにされた記憶が甦る。怖い。 「「おお、ナイスツッコミ」」 レムリアンシードとタマの声がハモる。やかましい。激痛にのたうち回りながら文芸部で鍛えられたツッコミスキルが発揮される。こんなことで発揮されたくない。 「ゾンビ? 不死身の?」 俺のゾンビのイメージは、全身が腐って、あ~あ~言いながら人を襲い、感染症のように増えていく。それなのに目の前ににいるゾンビ少女こと、タマを見る。 よく見ると体操着のところに[タマ]と大きく名前が書かれていた、そしてブルマ。ゾンビ、ゾンビと言われれば全身、つぎはぎだらけで青白い肌そして怪力。 「なぜ。ブルマに体操着?」   「ボクの趣味だ。悪いかい?」 「ゾンビってたくさん動き回るので動きやすいんです」 なるほど、ゾンビといえばよく動き回る、だから体操着にブルマ。今時の若い子にはブルマってわかるか。俺はちょっと心配。ネットでググってくれよな。誰に言っているんだろう?  「なるほど、納得はできないけど、まぁ、下手にツッコミはやめとく。で、俺もゾンビなのか?」 つい最近、知り合ったばかりの関係だ。深く詮索するのは野暮だろう。ゾンビになった経緯なんて聞きたくない。 「いいや。君はゾンビじゃないよ。そもそもゾンビなら手足を動かそうが、斬り落とされたようが痛みなんてないよ」 レムリアンシードが否定する。よく見てみると俺の手足にはタマのようなつぎはぎはない。確かに、生首になっても動き回るタマはゾンビだ。とうぜん、痛覚なんてないらしい。 「君はゴーレムだよ。ゴーレム。土人形さ」 レムリアンシードは言う。君は一度、死んでからゴーレムになったんだよ。 「ゴーレム?」 ゴーレムと言えば、俺の勝手なイメージでいいなら、ブロックを何百個も積み重ねた人形だ。意識はなく身勝手に暴れまわる厄介者。もしくは遺跡を守る守護者。 「レム。お前はネクロマンシーなんだよな?」 「偉大なネクロマンシーだよ。最初に言っただろう? ボクは失われた秘術を極めた。数多く技術を使って造り上げた存在が君やタマだよ」 だから、失った手足を繋ぐこともできたし、こうして生きている。なら、もう一度、やり直せるのか? 何事もなかった日常に戻れるのか? 「ああ、ただし、君の胸に札を剥がしてはいけないよ。それは君の生命線だからね」 そうレムリアンシードが言った。それよりも早く俺は胸に貼られた札に触れた。意識がとんだ。
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