狼さんは戻りたい

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あっという間に放課後になった。 ざわざわとした声とコツコツと廊下を歩く音がヘッドフォン越しに聞こえてくる。 重い鞄を持って立ち上がる。寄り道をせずに寮へ直行する。 俺は騒と同室、騒のために夕飯を作らねば。 ちらちらと見られながらも早足で廊下を歩く。 遠巻きに見ているだけで誰も話しかけてこない。 また、ひとりぼっち。 最近になって騒は午後からずっと生徒会室に篭っている。部屋に帰ってくる回数も減った。いつも生徒会の奴らと一緒にいる。 生徒会のお気に入りなのはわかっている。俺みたいな一般生徒と違って権力もあるし人脈もある。 だが、少しくらいは構ってくれてもいいんじゃないのか? せっかく騒の友人になれたのに今やまともに話す機会さえない。 広くて長い廊下を1人で歩く。 「…………寂しい」ボソッ 「んえ⁉︎」 「⁉︎」 驚いたような声が後ろから聞こえてきた。驚いて軽く飛び跳ねてしまう。そして何よりも、声色から俺の独り言が聞こえてしまったのだとわかる。 じわじわと顔に熱が集まっていく。多分今俺の顔は真っ赤になっているだろう。 恥ずかしくなった俺は声の主を確認せずにそのまま廊下を全力で走った。 ※ ※ ※ ※視点変わります。 どうも!僕は山内三葉(やまうち みつば)と申します。 風紀委員長様に助けていただいた一年です。 現在は風紀委員長様の親衛隊を立ち上げ、親衛隊隊長という役職に就かせていただいております。 親衛隊立ち上げを認めてもらおうと頑張ったんですよ!室川様に幾度となく親衛隊設立を提案し、32回目にしてやっと許可を得ることができました。何事も気合いと根性が必要ですね! そして今、僕はとっても驚いています! なんとあの一匹狼、狼夜くんが『寂しい』と呟いていたからです。 偶然にもその言葉を聞いてしまい、驚いて変な声が出てしまいました。お恥ずかしい…………… それにしても『寂しい』ですか…… ふふふっ!良い情報をゲットです! 山内三葉。一見無害そうに見えるチワワ系男の娘。 しかし、彼は風紀委員長である室川の親衛隊隊長であるとともにその働きぶりを認められ、たった2週間で風紀委員長直属の幹部の座を勝ち取った男である。 ※ちなみに風紀委員長直属の幹部という役職はない。風紀委員たちが勝手に名付けたのである。 だがしかし、その座に入るためには熾烈な戦いを乗り越え、自分の価値を証明し、風紀委員たちからの許可署名を3日以内に全体の8割以上からもらわなければならない。
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