狼さんは戻りたい

8/21

433人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
登校中に制裁現場を目撃した。 必要ない暴力は嫌いだし、目障りだったので加害者をぶっ飛ばして被害者を救出した。 だが一つ問題があった。 もし被害者を救出したことが知られて風紀委員会に呼び出されたとしたら……… 問題を起こしたと思われ、多少良くなった評判がまた落ちてしまうだろう。 近づいただけで怯えられるのは流石に心苦しい。 話が逸れてしまった。 とりあえず風紀委員会が面倒くさいので被害者の無事を確認し、軽く口止めしてから自分の教室に向かった。 しかし、俺は致命的なミスを犯したのである。 そう、加害者をぶっ飛ばした際にポケットの中に入れていたカードキーを落としてしまったのだ。 カードキーを調べれば誰のものなのかは一目瞭然。昼休みに風紀委員会から呼び出しをくらい、現状に至るのである。 それにしてもまさか風紀委員長が出てくるとは思わなかった。 校内で話題の風紀委員長。 たった数十分で1年A組の奴らを落とし、美形すぎるが故に風紀室から出ることを禁止されたらしい。 目の前の美形を凝視する。 美しい黒い髪に青紫色の瞳。 少し吊り目だ。まつ毛は長いというよりも目の縁を囲っているように伸びている。 ずっと無表情のため、近寄り難い雰囲気を醸し出している。背筋はしっかりと伸びており、姿勢がとても良い。長く少しゴツゴツした指、右手の中指にあるペンダコ。 涼しめな緑色を基準とした制服を見事に着こなし、優雅に紅茶を嗜んでいる。 ランキング上位の生徒会を見慣れた俺ですら一瞬見惚れたほどだ。そのくらいに顔が整っているのである。 「…………俺の顔に何かついているのか?」 じっくりと観察する俺を見て、委員長は困惑しているようだ。 低く、色気の混じった声。 美形大好きなチワワどもが好きそうな声だ。声を聞いただけでも間違いなく失神者が出る。 なぜ表舞台に出てこないのかこの数分で良くわかった。 ただ委員長が廊下を歩いているだけでも、校内は阿鼻叫喚の嵐と化すだろう。この美形、危険である。 ………ってそんなことを考えている場合じゃない 「いや何もついてない。…それよりも風紀委員長が俺に何の用だ?」 「……このカードキーを返すためだ」 カップを机の上に置いてから俺のカードキーを差し出してくる。 落とし物のカードキーは風紀委員会が預かることになっている。 別におかしいことではない。 だが…………… 「それだけじゃないだろ?カードキーを返すためにわざわざ委員長サマが出てくるなんて考えられねぇからな」 風紀委員会といってもひとまとめにはできない。 主に各教室から1人ずつ選ばれる風紀委員、そして正式な風紀委員会に属する委員で成り立っている。一見同じように見えるが役割は全然違う。 会社で例えると前者が派遣社員、後者が正社員である。 風紀委員は教室内の環境を整えたり、委員会からの連絡事項を伝える。 そして風紀委員は見回りや重要な書類仕事などをしたりする。 さらに上の立場が風紀委員長直属、副委員長、風紀委員長となる。 カードキーの受け渡しは正式な風紀委員が基本的に行う。というかそれ以上の役職が来たら。 しかも風紀委員会のトップが直々にカードキーを渡しに来たのだ。絶対に何かある。警戒はしておいた方がいいだろう。 ※ ※ ※ 突然すみません。 作者から少し質問です。 読者の皆様はどんな属性のキャラクターが好きですか?キャラデザの参考にさせていただきたいです。 ちなみに作者はツンデレが大好きです。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

433人が本棚に入れています
本棚に追加