狼さんは戻りたい

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「………っ…ははは!」 堪えきれなかったように委員長は笑い出す。 「そんなに警戒しなくても大丈夫だ。別に取って食おうというわけじゃない」 あからさまに警戒しすぎたのか、相手に感づかれてしまったようだ。 俺の緊張をやわらげるためなのか、はたまた無意識なのかわからないが、委員長の雰囲気がガラリと変わった。 近寄り難い、威厳のある雰囲気からこちらを揶揄うような軽い雰囲気になった。 無表情が崩れて面白がるようにこちらを見ている。 「なぁ、ちょっと話さないか?」 組んだ脚に右肘をのせて、やや上目遣いにこちらを見上げてくる。 その溢れんばかりの色気に当てられ、銅像のように固まってしまう。 そんな俺を見て委員長がまた笑い出す。 笑うなと目で語りかけているうちに気がついた。 いつのまにか肩の力が抜けていたのである。自分の思ってる以上に緊張していたみたいだ。 そこからしばらく委員長と雑談をした。天気の話から始まり、へッドフォンや最近の学校生活のことなどさまざまなことを話した。 意外と話が盛り上がり、楽しい時間を過ごすことができた。 委員長は切り返しが上手でよく相槌を打ってくれる。とても話しやすい。 騒と話すときは完全に聴き役にまわっていたので自分が積極的に話すことがあまりなかった。 人と話すことがこんなに楽しいと初めて知った。 気がついたら2時間も経っていて驚いた。そのくらいに充実した時間を過ごすことができたのである。 「………なぁ、委員長さん。…また話しに来てもいいか?ここは居心地がいい」 「ああ、構わない」 またこちらに来る許可も得ることができた。 晴れやかな気分で風紀室から出る。廊下を歩いて教室に向かう。 学校に来る新たな楽しみができた。次はお菓子を焼いて持って行こう。 長い廊下を歩き終わり、教室の扉の前に立つ。 そこで俺は気がついた。 あっ………カードキー……… ※ ※ ※
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