狼さんは戻りたい

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まだ委員長はパソコンと向き合っていた。 カタカタと音が鳴る。 打つのがとても速い。パソコンを速い人はキーボードを見ないと言うが、それは事実なのだと初めて知った。 パソコンを打っているだけなのに謎の色気を放っている。 「えーっと……出直した方がいい…よな?」 「問題ない。そろそろひと段落つく、ソファに座って少し待っていてくれ」 話しながらもパソコンを打つ手は止めていない。 委員長は規格外だと理解してから、かばんを持って近くのソファに腰掛ける。 単語帳を取り出し、英単語の復習をする。 20枚目をめくった時、パソコンを打つ音が鳴り止んだ。 委員長が目の前のソファに座る。俺は単語帳を仕舞い、かばんの中からクッキーを取り出す。 「よかったら………」 おずおずと差し出す。 「これは………?」 軽く首を傾げながら委員長は聞いてくる。 「作った。コーヒーと一緒に食べたら美味しいはず」 「そうか、ありがとうな」 「別に………………」 自分が作りたかったから作っただけ。別に委員長のために作ったわけじゃない。 自分で自分に言い訳をする。 「そういえば制裁をまた止めてくれたそうだな?平野が感謝していた」 「俺はほとんど何もやってない。その平野って人がほとんど片付けた」 「それでもという点においては変わりない。これまでも何度か制裁を止めてくれていただろ?」 「……一方的、必要のない暴力は嫌い」 裏の番長、暴力好きの問題児とか言われているがそんなことはない。 自分に危害を加えてくる奴らを排除し続けていただけである。 暴力はあるところにあるべきで、無闇に使うものではないと今の俺は考えている。 なので弱い奴らをマークし、カツアゲや制裁をする連中が大嫌いだ。 「というか俺もよく制裁している奴らをぶっ飛ばしているよな?そこは不問なのか?」 「…………助かっている人がいる以上、やりすぎなければ大丈夫だ」 少し考えた後、委員長は言った。 俺の考え方とよく似ている。 …………だから話しやすいのかもしれないな 「まぁ確かに、風紀も制裁止める時普通に倒してたな」 俺の言葉を聞いて委員長が笑う。 それにつられて俺も共に笑う。 ただ話していただけなのに、まだ会ったばかりなのに、何か特別な一言を言われたわけでもないのに、不思議と思ってしまう。 委員長の近くに少しでも長く居続けたい………と ※ ※ ※
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