狼さんは戻りたい

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※ ※ ※ 俺はお菓子を片手にちょくちょく風紀室を訪問した。 たまに仕事を手伝ったりもした。荒技が必要な時もあるため、喧嘩慣れしている俺は重宝された。 風紀委員とも顔見知りになり、廊下ですれ違ったら笑顔で挨拶をしてくれた。 いろいろな人たちと触れ合う機会が増え、人との関わり方を学ぶことができた。 頑張ってクラスメイトに話しかけてみたら、予想以上に簡単に仲良くなれた。 クラスメイトたちからもたまに話しかけてくるようになった。 忌避していた親衛隊も普通にいい奴らだった。 勝手な偏見で意味もなく嫌っていたあの頃の俺を殴りたい。 少し考え方を変えるだけで、少し違う行動をしてみるだけで周囲は大きく変わる。 委員長はこのことを伝えるために、カードキーを返すという建前でわざわざ時間を空けてくれていたのだろうか? あの風紀委員長様だ、俺の過去も知っている可能性が高い。 だから人と関わることは怖くないと教えてくれたのだろうか? ………いや考えすぎだな、ただ俺がそう思いたいだけなのだろう。 いつのまにか風紀室に行くことが楽しみになっていた。というかもう日常の一部と化していた。 ————完全に絆された一匹狼くんである。
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