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◆◇◆◇
目を覚ますと、俺の手足は自由に動くし、培養液の中にいる感じでもなかった。
夢だったのか……
ひどい悪夢だった。さすがに、疲れているのだろうか。そんなことを考えながら、いつも通りに仕事に向かった。
いつものように仕事をこなし、八時前には帰宅して、家族団欒の時間を楽しむ。優しい妻にかわいい娘、何一つストレスのない生活だ。
「榊原先生、どうですか?」
「ああ、バーチャルリアリティの世界に意識を飛ばしているから、何のストレスもなく過ごせているようです」
「では、土壌としては」
「かなり肥沃な土壌と言えるでしょうね。これは、期待できますよ。元々、臓器移植の礎になる覚悟、なんて言っていたくらいですからね」
俺の意識がバーチャルリアリティの世界に飛ばされている中、現実の俺は胸部と腹部を切り開かれた内臓丸出しの状態で、培養液に浸かっている。
そして、俺の身体からは、肝臓や腎臓などの臓器が育っている。
俺の知らないところで、今日から俺は内臓を培養するための土壌になったらしい。
了
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