培養臓器ファーム

10/11
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「どうやら、奥様は、あなたが銀座のスナックの女性と浮気を繰り返していたことにかなりご立腹のご様子です。その事を、あなたの上司である高級官僚のお父上に相談されたようで。まあ、その結果、改正臓器移植管理法に則り、二親等以内の身内があなたの人権を売ったということですね」    榊原先生は説明をしながら、拘束されている俺の首筋に注射をした。義父の企てなのか。それに、臓器移植管理法ではなく、改定臓器移植管理法だと。俺の知らないところで、話が進んでいたのか? 「乳幼児以外では、意志の表出が可能な場合は、ご本人の承諾以外で人権を売ることはできません。ただ、ご安心ください。先程の注射で全ての運動神経を麻痺させ、あなたはもうすぐ意志の表出のできない存在になりますので」  即効性の薬だったのか、すでに口を開くことも、目を動かすことも、呼吸をすることも、ままならなくなってきた。 「さあ、元前田さんを一旦人工呼吸器に繋ぎ、その後、処置をして培養のための土壌としましょう。かなりの健康体と聞いています。早くしないともったいない」  何をいってんだ、このマッドサイエンティストは。俺はこのまま、あの培養液の中で一生過ごすのか。いやだ、いやだ。夢なら覚めてくれ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!