培養臓器ファーム

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 その後の榊原先生との打ち合わせの中で、第二案は培養液につけた状態で成長させる水耕栽培形式ではなく、皮膚や脂肪、血液などがある土壌を作ってから培養していく、に似た方法で行われていることが分かった。  そして数週間後、榊原先生から視察オーケーの連絡を受けて、俺は再び培養臓器ファームを訪れた。上司から進捗の報告を迫られていることもあり、土壌栽培の状況を視察し、状況によっては早めの移植への運用を促すためだった。  本来なら、子どもの運動会の日。いきなりの仕事に対して、妻も子どもも文句を言い、非難めいた視線を俺に向けてきていた。  確かにこれまでも、帰宅は深夜だし、家族サービスなどほとんどできていなかった。特に今の仕事に就いてからは、ほぼ全ての家族イベントは不参加になった。  それでも、一般家庭よりは遥かに高額な給料を預けている。休日まで俺が働いているからこそなのに、なんでアイツらは感謝もしないであんな目で見やがるんだ。このイライラは、愛人のところで性欲と一緒に吐き出して帰ろう。  そんな事を考えながら歩いていたら、前を歩く榊原先生が止まった事に気が付かず、軽くぶつかってしまった。 「ああ、先生、失礼しました」 「いえいえ、それより、これを見てください」
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