培養臓器ファーム

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「で、榊原先生。その第三案とは?」 「実はすでに始めているんですよ。こちらにどうぞ」  一瞬見せた榊原先生の表情が、やけに歪な笑顔に見えた。  さらにセキュリティの高い研究室のドアロックを、榊原先生が虹彩認証と耳介認証で解錠した。  そこで目にした光景は、俺の予想を遥かに超越したものだった。 「ウッ」  思わず嗚咽を漏らし、口元に手をやる。  これは、この研究室で行われているのは、正気の沙汰じゃない。人間がやっていい領域を超えている。  俺の目に映ったのは、培養液に満たされたカプセルに、胸部腹部を開かれた状態で入れられて、呼吸器を付けられている多くの人間。  高齢者、中年、青年、中高生、小学校低学年、乳児、そして妊婦が数人ずつ。  全員が自らの内臓を露わにしている。そして、その臓器の中に新しく成長を促している臓器が存在している。 「榊原先生、こ、これは」 「すごいでしょう。水耕栽培では成長しすぎてしまった。土壌栽培では成長が足りなかった。では、どうするか。そう、水耕栽培と土壌栽培をハイブリットした新たな臓器培養方法」  俺の方に満面の笑みで語りかけてくる。すごいだろう、と同意を促してくる。 「生きている人間の体内で、新たな臓器を栽培、培養するんだ。これなら、きっとうまくいく」
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