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「榊原先生、これは、さすがに倫理的に問題ではないですか? 生きている人間、なのですよね」
さすがにこれはマズイ。こんな培養方法を世界に示したら、人権団体どこらか世界中から糾弾されることは間違いない。さすがに俺自身も、これはやりすぎだと思う。
「とりあえず、現状を上司に報告します。今後のことはそれからで」
「いや、大丈夫ですよ。前田さんの上司の方は、すでにご存知ですから」
「えっ、どういうことですか?」
「水耕栽培のように、培養液から直接栄養を摂取する生きている人間を土壌として使い、その体内で新しい臓器を育てていく。ただ、どの年齢層が、男女どちらの性別が肥沃な土壌として適当なのか研究段階なので、さまざまな年代、性別を揃えています。まあ、実験中ってとこですね」
実験中、ってなんだ。頭おかしいのか。
「この、胸やお腹を切り開かれている人たちは……」
「ああ、この方たちはご自身の人権を売られた方たちですよ」
「人権を売る?」
「ええ、いろんな事情で人権を売ってしまう人がいるんですよね。金目的や犯罪絡みなんかでね」
確かに、裏社会ではそんなことがまかり通っているとは聞いたことがある。特に臓器の売買目的とかで。
「ただね……」
榊原先生が、含みをはらませて言葉を続ける。
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