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「人権を売るような人たちは、身体に何か問題がある人が多いんですよね。低栄養だったり、不摂生でどこかに病気を抱えていたり、精神疾患を患っていたり」
いつの間にか、俺の後ろに警備員が立っていたことに気がついた。
「だからね、心身共に健康な人で培養してみたかったんですが、なかなかそんな都合の良い人がいなくて困っていたんですよ」
榊原先生の笑顔とは裏腹に、俺は猛烈な不安に襲われた。
「ありがとうございます、前田さん。お身体をご提供いただいて」
次の瞬間、俺の後ろにいた警備員が俺の身体を拘束した。榊原先生は、いつのまにか取り出したのか、薬剤の入った注射器を持っている。
「待て、待ってくれ。俺は人権を売ったりしていない。何かの間違いだ」
「いえいえ。今朝方、前田さんの上司から人権売買の打診があり、僕が前田さんの人権を一億円で、あなたの奥様から買い取りました。あっ、そういえば、あなたはもう、前田さんではないんでしたね。失礼しました」
妻が俺の人権を売っただと。
「そんな馬鹿な話があるか」
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